生化学・分子生物学

所属メンバー

教授平塚 浩一
准教授竹内 麗理
専任講師桒原 紀子

講座の特徴

 現在ではヒトをはじめとして様々な生物の全ゲノム塩基配列が解読され,公的データベースに登録されている。本講座では,これらの膨大なデーターベースを利用し,長年培われた遺伝子組換え技術や細胞工学技術を応用することで,将来的に新たな歯科医療の診断・治療に役立つ基礎研究を進めているのが特徴である。
 本講座は現在までに,歯科の2大疾患であるう蝕(ムシ歯)や歯周病(歯槽膿漏)の発生機序の解明や,またこれに伴う生体反応の解析,感染に対する防御法の研究に焦点を当て進めてきた。これらの基礎研究から将来有用な診断法や治療法を開発し,これまでに,う蝕や歯周病のDNA診断やワクチン開発に対する数々の論文を出している。加えて,高齢になり歯の本数が減少し,噛み合わせが低下することで記憶・学習能率が低下する検証や,様々な歯科レーザー照射による殺菌効果等を,他大学または本学の他講座との共同研究をすすめている。このように生化学・分子生物学講座では,基礎と臨床との接点を絶えず見つめながら研究に邁進している。

教育

 当講座は2年次前期の「生化学」を担当している。毎週水曜日9時〜17時の一日かけておこなう講義・実習統合型授業であり,午前3時間と午後3時間でそれぞれ一つの講義や実習をおこなう。また,1)「予習」の義務化,2) 午前および午後で「講義」と「演習」の一体化授業,3) 1日の最後におこなうweb-based-learningを活用した「確認テスト」,4) 成績不良者に対する「口頭試問」の4つを基本とした統合型プログラムを構築している。「実習」は可及的に関連講義直後に配置し,必要最小限にとどめている。講義・演習の一体化により,講義時間配分の自由化とすぐ後の演習時間の確保により学生が直ちに復習を開始できる効果的かつ効率的な組合せを実行している。

参考

研究内容

1. 歯周病病態を把握するための歯周病原細菌遺伝子およびnon-coding RNA発現動態の検証
 病と最も関連性のあるPorphyromonas gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticolaのRed complex 3菌種に加え,侵襲性歯周炎の原因細菌の1つであるAggregatibacter actinomycetemcomitans の 遺伝子およびnon-coding small RNAsを 次世代シークエンサーを用いて網羅的に同定・解析し,遺伝子プローブとしてカスタムアレイを作成し,細菌の新たな病原性遺伝子転写調節メカニズムの解明と,将来的に歯周病の病態診断に有用な診断パネルの作成を目的とする。加えてLEDや紫外線照射により,歯周ポケットに潜む口腔細菌の増殖や病原性の変動を探り,効果的な殺菌方法を調査し,新たな治療方法の開発を行う。

2. 口内炎および歯肉肥厚の新規薬物療法開発
 口内炎は,日常生活の中で多くの方に発症し,がん治療における放射線療法や抗がん剤の副作用としても発症する。がん治療を受けている患者に口内炎が発症した場合,治療期間の延期や投薬量の変更を余儀なくされる。さらに,患者に多大な自覚的苦痛をもたらし,疼痛による食事摂取量の減少やコミュニケーション機能の低下により,患者QOLを著しく低下させる。歯肉肥厚は,炎症刺激と薬物の副作用が原因で歯間乳頭や辺縁歯肉の付着歯肉部に線維性の増殖を呈し,咀嚼機能に悪影響を及ぼす疾患である。いずれの疾患も現在,完治させる治療薬がない。この研究では,疾患モデル動物を作製し,また培養細胞を用いて,新規薬物療法の開発を行う。

3. 加齢による唾液腺・骨の機能異常の解明とインプラント新規材料の研究
 「加齢による口腔乾燥症と骨の機能異常のメカニズム解明」を課題としている。老化に伴う疾患は全身的・局所的要因が複雑に関わるため,発現メカニズムが明らかでない。口腔乾燥症は,自己免疫疾患の老齢マウスを用いて若年マウス,野生型マウスと遺伝子レベルで比較し,発現メカニズムの解明を行っている。シェーグレン症候群のメカニズムの解明も進めている。
老化の中心的役割を担う時計遺伝子DEC1の発現異常が骨の異常の原因である可能性を検討している。DEC1のない老化マウスと,DEC1のある若年マウスの獲得免疫系細胞は同等であることから,今後DEC1を指標とし,機能的変化と骨密度の変化を検討することで時計機構の意義を考えている。また,臨床において,より安全な材料の開発の一助になるよう,インプラント新規材料の研究も進行している。

連絡先

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