解剖学
講座の特徴
歯科臨床において,歯科医師は主に口腔周辺の治療を行いますが,その際には患者さんの全身状態を把握していることが必須条件となります。解剖学は身体の正常な構造を研究する学問で,医学・歯学の最も基盤となる領域です。
解剖学は肉眼解剖学と顕微鏡解剖学に分けられますが,当講座は肉眼解剖学を担当しています。1年次の「歯の解剖学」では歯の基本形態を学びます。2年次の「解剖学」は,前期は講義形式となります。人体について,骨・筋・神経・脈管・消化器などの系統ごとに,一般的な形態を学びます。同時に,性別,年齢,地域集団さらには個人による身体の違いについても理解を深め,将来の歯科臨床に備えます。後期には解剖学実習を行い,実際のご遺体で人体の構造を学びます。この実習は,医学・歯学の教育・研究のために自らの体を提供された方々のご遺体で行います。この崇高な行為を篤志献体といいます。
解剖学は人体の構造を学ぶとともに,人の死と生について考え医の倫理を学ぶ場でもあります。当講座の教育は日本大学松戸歯学部白菊会の会員の方々によって支えられています。
研究内容
当講座は,伝統的にヒトや霊長類の歯や歯列さらに頭蓋の形態の数量的解析を行ってきました。現在は以下のテーマに沿った研究を展開しています。これらの研究の多くは学内のみならず,国内・国外の大学・研究所等との共同で進められています。
1. 歯および頭蓋骨の人類学的研究
人類諸集団の歯および頭蓋骨の形態を分析し,個体変異,年齢差,集団差,時代差などを明らかにし,人類の進化や人類の環境への適応過程を解明する研究を行っています。分析対象は,海外および国内の調査で得られた歯列石膏模型,X線画像,三次元形状データなどです。形態分析の方法として,二次元的・三次元的な計測,非計測項目の観察など多様な手法を用いています。
幅広い時代や地域における人々の歯や頭蓋骨の形態を調べることで,現代人の歯科疾患の特徴がわかることがあります。
2. 三次元画像の構築
形態学的および人類学的に歯や人体の骨格を分析する際に,より精密な分析を行うために,フォトグラメトリーや三次元形状測定を用いて三次元画像の構築を試みています。この成果は,標本の作成にも応用できることが期待されています。
3. 人工知能(AI)を歯の鑑別や骨形態の判別に利用する研究
歯の鑑別は大規模災害時の個人識別や遺跡から出土した人骨の鑑定などに応用されますが,こうした鑑別をAIによって自動化する試みを行っています。多数の歯や骨の画像をコンピュータに読み込ませるディープラーニングの技術を使って,高精度で形態判別を行うモデルの開発を行っています。この研究は理工学部の内木場文男教授のグループと共同で進めています。
連絡先
電話 047−360−9318