首から上の慢性の痛み

口・顔・頭の痛み外来のご案内

日本大学松戸歯学部では平成18年の新病院開院とともに,国内でも他に類を見ない,歯科と医科の医師が同時に,同じ診療室で,口,顔,頭の痛みを診察するという「口・顔・頭の痛み外来」をスタートさせました。
この外来に一番多くおいでになるのは,顎関節の痛みの方や顎関節周辺の筋肉の痛みの患者さんです。さらに,いろんな歯科で歯を治療したがまだ痛い方や抜歯したあとも痛い,各種の顔面の神経痛や舌がヒリヒリする舌痛症,頬や顎などが慢性に痛むが調べても病名のつかない顔面痛などの患者さん。また,慢性,習慣性のつらい頭痛の患者さんなど,文字通り,口から,顔,頭と頭部の痛みのすべての患者さんが訪れています。


なぜ「口・顔・頭」なのでしょうか

なぜ歯科大学病院に「口・顔・頭の痛み」の専門外来を設置したのでしょうか?それはたとえば,顎関節に原因のある顎関節症関連の痛みの患者さんがたくさん当病院にみえますが,多くの場合,顎関節そのものよりも,顎関節を動かす筋肉に過剰の負担を持っていることが多いのです。こうした噛むためにある筋肉は,近くで働いている首の筋肉や頭部の筋肉と密接に関連していますから,いわゆる肩こり頭痛(緊張型頭痛)や首の痛みなどを一緒に持っている場合が多く見られます。このような方では,顎の周辺だけでなく,首や肩こりも一緒に治療することが効果的で必要なことなのです。
また,顔に痛みを持っている患者さんでは歯科,耳鼻咽喉科,頭頸部外科,内科,脳神経外科などいくつもの病院を回り回って,それでも診断が明らかにならない,対処法を指導されない,ということが多く起きています。こうした患者さんに充分な診療をできるように体制を整えました。

実際の診察は

そこで,「口・顔・頭の痛み外来」では,それぞれの専門医の診察を受けるには何カ所も病院を回らなければならない現状を打開して,迅速に集中して口・顔・頭の痛みに対応するため,歯科医,口腔外科医,顎関節の専門医,耳鼻咽喉科の専門医,頭痛専門医,脳神経外科専門医などをひとつの外来に集中して配置することにより,患者さんが病院を回るのではなく,各種の医師がひとりの患者さんの周りを取り囲んで診察するイメージとしました。

このことにより,連携を緊密にして診断の遅れや漏れを最小限にする努力をしています。まず初診担当がお会いして方向付けを行い,可能な限り同じ日のうちに必要な専門担当の診察をすませて初期の治療方針を決定するようなシステムとなっています。

症例

それでは,しつこい頭痛,薬が効かない頭痛,顔面の神経痛(三叉神経痛が代表です),舌の痛みなどについて,症例モデルをご紹介します。

私の頭痛はヘンズツウかな? 会社員Aさん(23歳女性)「しつこい頭痛」


中学生くらいから月に1,2度右側頭部が心臓にあわせて脈打つ様に痛くなる。吐き気がして,動くと痛みがひどくなり,仕事を続けられなくなる。吐き気がして時には吐いてしまう。そういうときは休憩室で電気を消してじっとしているしかなくなる。

翌日には収まるが半年くらい前から徐々に回数が増え週に3,4日は薬局で買った鎮痛剤をのむようになった。3カ月くらい前からは朝から重い頭痛がしてつらく,ほぼ連日薬を飲むようになったが飲んでも収まらないことが多くなり,欠勤が増えた。家族に受診を勧められて来院。


ヘンズツウって?
ヘンズツウ,という言葉は普段皆さんも日常生活の中できかれることがあると思います。お友だちが「わたし,朝からヘンズツウがしちゃって・・・」などという会話はどなたも聞かれたことがあるでしょう。

しかしながら本当の片頭痛はひどくつらいことが特徴で,日常生活への影響がとても大きい病気なのです。そして仕事や勉強などを中途で止めることになることが多いのです。痛みは,頭の前から側頭部の片側に出ることが多く,ズキンズキンと心臓の拍動と同じリズムで痛み,体を動かすことで痛みがひどくなり,それまでの作業をやめて横になって安静にせざるを得なくなります。このような症状に,さらに吐き気や嘔吐,明かりや,テレビ,人の声やテレビの音などがひどくつらく,静かで暗いところで休みたいと生活に影響を持つことが特徴です。

どうすればいいの
いろいろな誘因で片頭痛が出やすくなることが知られていますが,特に規則正しい睡眠,食事が大切です。片頭痛はいわば持病ですので,まったく無くすることは困難ですから,うまくお薬を使いながら付き合っていくことが大切になります。


お薬は

始まった痛みを抑えるためにはどうしてもお薬が必要になります。市販薬などのいわゆる「頭痛薬」は鎮痛剤ですが,お薬を使う日が月に3,4日くらいで,効果がよく,お仕事などに差し支えないのであればそれらの薬でよろしいでしょう。しかし,多くの片頭痛の方のように,それ以上の回数で頭痛のある方,痛みの強い方,嘔吐することの多い片頭痛の方にはお勧めできません。

現在,片頭痛の発作に主に使われているのは医師の処方するトリプタン系製剤といわれるものです。これは鎮痛剤ではなく,片頭痛の発作を抑えて痛みをとる目的で使われるお薬です。

月に4,5回以上片頭痛を経験されて,お仕事などに支障の出る方の場合は,こうした発作時に使う薬ばかりでなく,予防薬を併用すると楽になる場合が少なくありません。また,薬を使う回数(正確には日数)の多い方では,Aさんのように薬の効果が薄れてきて,ほとんど効かなくなる方が出てきます。

Aさんの「お薬が効かない片頭痛」
片頭痛は,非常に強いつらい症状の病気なので,頭痛に対する恐怖感のため,つい,薬に頼りがちになり必要以上の薬を飲むこととなります。
ところが片頭痛は薬を使いすぎると効きにくくなる特徴があり,薬が効かない患者さんの恐怖感と不安はより強くなり,効果の期待できない薬にさらに頼ることとなります。

この状態になると片頭痛はより一段重症となった状況になり,「薬物乱用頭痛」といわれます。Aさんは,この状態で病院に見えました。この状態になると,治療はより困難になり薬が効く状態に戻ってもらうためにつらい時間が必要になります(表)。薬の種類にもよりますが月に10日以上使用すると,薬の効果が期待しにくくなり,こうした状態にならないことが大切です。
薬物乱用頭痛(ABCDの条件を満たすもの)

A

頭痛は1カ月に15日以上ある

B

頭痛の急性治療などのために使用されたひとつ以上の薬物を定期的に乱用している

C

頭痛は薬物乱用のある時期に悪化している

D

薬物の使用中止後2カ月以内に著明に改善する

(国際頭痛分類第2版「薬物乱用頭痛」診断基準より改変)

どうすればいいの?
薬物乱用頭痛の場合には,医師の指導のもと,予防薬を適切に用いて一定期間の断薬を行う必要がありますので,当外来にご相談ください。

顔面の神経痛とは
顔や口の中の半分がビリッと痛むのが顔面の神経痛ですが,これは「三叉(さんさ)神経痛」といいます。顔や口の痛みを伝える神経は「三叉神経」ですのでこういう名前で呼ばれます。中年以上の方に多く,じっとしていれば痛くありませんが洗顔やお化粧,髭剃りや,口を動かすときなど軽い刺激でビリッとした電気が走るような短く強い痛みが顔や口の中に走ります。顔面の片側にだけあらわれ,いつも決まった痛みであることが特徴です。

ひどくなると,痛みのために食事ができなくなったり,話をすると痛いので,口もきけなくなる方もおられます。一回一回は短く,長くは続きませんが,繰り返し,一日に何度も生じるひどく強い痛みですので,病院にすぐに行かれる方が多いようです。

鼻のあたりが痛いと耳鼻科に行き,口の中に痛みが走ると,歯科・口腔外科に行かれると思います。症状が典型的であれば診断は難しくないのですが,痛いところに入れ歯があったり,虫歯があったりすると,患者さんも,医師の側も,まずはそれを治してみようということになりがちです。

Nさん60歳(女性)の場合

半年ほど前から右上あごの入れ歯の下の歯茎(はぐき)がチクッと痛くなるようになった。食事中痛く,また,洗顔の時に上唇の右側にふれるとその歯茎のところに電気が走るような痛みがある。当初は今ほど強い痛みではなかった。

歯科で入れ歯が歯茎に当たる部分を削ってもらうとしばらく収まるようであった。何回か入れ歯の調整をしたが,この頃は痛くて食事が中断するほどである。

当院の診断では歯茎に病変は認められず,唇を触ると歯茎が痛いという特徴的な症状より三叉神経痛と考えました。お薬を処方し一週間ほどで痛みはほぼ無くなりました。

Nさんの治療
三叉神経痛はとても痛い病気で,Nさんも食事に不自由が出ていましたので治療が必要でした。

まず選ばれるのは内服薬による治療です。抗てんかん薬という種類の神経に作用する薬がよく効く場合が多く,広く用いられています。また,神経ブロックといって,当座の痛みを抑えるために神経を直接に薬物などで麻痺させる治療も行われます。さらに,これらの方法でよくなりにくい人や,長くお薬を飲むことが向かない方では,開頭手術を行うこともあります。最近では,薬があまり効果がなく,手術も体力的に十分でないご高齢の方には放射線による治療もでてきました(健康保険適応外)。

Nさんのその後
じつは三叉神経痛の方の10人に1人程度は脳腫瘍などの疾患によって三叉神経痛が起こることがわかっています。なので,三叉神経痛を疑った場合にはCTやMRIなどの脳の検査を一度は行う必要があります。Nさんの場合もMRIをおこなったところ良性の脳腫瘍が明らかになりました。三叉神経痛といわれている方で脳の検査をお受けになっていない方は,当外来にご相談ください。
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