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学会発表

報告年月日 2002年12月17日
ユニット番号 4-1-(31)
報告記入責任者 平塚浩一
表題(発表タイトル) Porphyromonas gingivalis 遺伝子発現マイクロアレイ ─菌体増殖─
発表学会名 第45回秋期日本歯周病学会学術大会
発表年月日 2002年10月25日
開催場所 広島国際会議場(広島市)
発表者(所属) 平塚浩一,柴田恭子,岸川道子,安孫子宜光
抄 録 【目的】
 ゲノムプロジェクトの進歩に伴い,大量の遺伝子情報を一度に処理,解析する必要性が高まってきた。このようなニーズに答える1つの手法としてDNAチップが開発され現在に至っている。DNAチップとは,DNAをスライドグラスまたはシリコン基盤の上にスポットしたものの総称で,ハイブリダイゼ−ション法により,各遺伝子発現量を定性的に解析するといったトランスクリプト−ム解析を行うことが可能である。本研究では成人性歯周炎の主要病原細菌であるPorphyromonas gingivalis病原性因子用のカスタムメイドアレイを作成し,その有用性を検討する。試料として本菌体の各増殖時期のRNAを用いて,各時期において有意に発現量の変化が認められる遺伝子をスクリーニングし,RT-PCRにて確認することでアレイの有用性を検討することを目的とする。

【材料および方法】

  1. DNA array の作製
    GenebankおよびTIGR databaseからP. gingivalisの病原性遺伝子,既知遺伝子を主に選択し(約120遺伝子),各遺伝子の特異的領域をホモロジー検索にて確認後,PCR法によって増幅した。得られたPCR産物をマイクロアレイ用スライドグラス上にスポットした。

  2. 蛍光サンプルの調整
    菌体をearly-log, mid-log, late-logおよびstationary phaseに増殖させ,それぞれのステージからtotal RNAを抽出した。Random primer存在下でRT反応を行い,cDNA合成過程で蛍光色素を取り込ませた。

  3. ハイブリダイゼーションおよび蛍光強度の測定
    自動ハイブリダイゼーション装置中で蛍光試料をDNAアレイ上にハイブリダイゼーションを行い,洗浄後,アレイスキャナーを用いて各遺伝子の蛍光強度を測定した。また,解析は遺伝子発現解析ソフト (GeneSpringメ) を用いて行った。

【結果】
 mid-log phaseのサンプルをコントロールとして各増殖過程における発現量の変化を検討した結果,early-log phaseでは発現量の増加が認められる遺伝子が減少が認められる遺伝子よりも多く存在し,stationary phaseでは逆に発現量の減少が認められる遺伝子が増加が認められる遺伝子よりも著明に存在する結果となった。またこの結果はRT-PCRにおいても確認された。また各増殖時期においてそれぞれ特異的な遺伝子の発現が認められた。

【考察および結論】
 各菌体増殖期においてP. gingivalisが代謝・増殖するための環境を整えるために,それぞれ必要な遺伝子発現量を調整している状態が確認された。また,このようにグローバルな観点から各遺伝子の発現量を検討し,その候補となる遺伝子を挙げる目的でDNAアレイは強力なツールであることが示唆された。

共同研究者:日本大学松戸歯学部生化学教室:今岡朝代,浜島進
本研究は, 科学研究費補助金基盤研究(C)(2)13671981および文部科学省平成13年度学術フロンティア推進事業の補助を受けて行った。

研究装置 英国アマルシャムファルマシアバイオテク社製マイクロアレイスポッター&スキャナー

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