口と顎の不随意運動に対する治療

神経歯科外来のご案内

「神経歯科外来」は,口と顎の不随意運動症を対象とした,口腔神経の専門医員と医科診療部が連携する専門外来です。

実際に,「神経歯科外来」とはどのような診療を行うところかを患者さんの例をあげて,説明していきましょう。

Aさんは,数年前から上顎に総入れ歯,下顎の左右の奥歯に入れ歯を入れていた患者さんです。下の入れ歯は作った当初からあまり使用しておらず,上の入れ歯もなかなか合わずに,調整を繰り返していました。

数ヶ月前から,下顎が勝手に閉じてしまうのを感じていたのですが,「飴玉」を口の中に入れておくと落ち着いていたので,そのままにしていました。ところが3日前から急に噛みしめが強くなり,上の入れ歯も入れていられくなり,下の前歯が直接上の歯ぐきに噛み込んでしまう様になりました。

噛みしめは自分では止めることができず,上の歯ぐきにひどい潰瘍(ただれ)をつくってしまい,血が出るくらいでした。痛みのため,ハンカチを口にはさみ,噛みしめのクッション代わりにしていないと痛みは我慢できませんでした。当然,食事も十分には摂れない状態でした。
最初に,脳神経外科からお薬による治療が始まりました。お薬による治療で,安定する患者さんもいらっしゃいますが,Aさんの噛みしめてしまう不随運動は改善されることがなかったので,さらに,ボトックス注射による治療を行ないました。


ボトックス治療について





ボトックスとは,ボツリヌス菌という細菌から産生される,「ボツリヌストキシン」,というたんぱく質の一種をお薬にした,A型ボツリヌス毒素製剤のことです。皆さんになじみがある治療法では「プチ整形」と呼ばれている眉間のしわとりに使われているものと同じものです。このボトックスを,勝手に噛みしめてしまう筋肉に注射するのがボトックス治療です。

筋肉に注射することにより一定期間,筋肉の力を弱くすることができます。通常ではボトックスの効果はしばらくしてから効き始めますが,Aさんの場合は比較的早く効果が出て,翌日には歯ぐきを噛みしめることがなくなりました。

ボトックス注射で下顎が勝手に動くことがおさまりましたので上と下の入れ歯の製作に取り掛かり,新しい入れ歯が入りました。新しい入れ歯で食事もとることができ,日常の健康な生活を取り戻せました。

通常,ボトックスの効果は3~6カ月ほど続き,効果がなくなってきますが,Aさんの場合は約2年経過していますが,下顎が勝手に噛み締めてしまう症状は再発していません。

舌や顎,くちびるが勝手に「もぐもぐ動く」や「噛みしめてしまう」,あるいは「顎が思うように動かない」などの症状が気になられる方は,「神経歯科外来」にご相談ください。

連絡先

日本大学松戸歯学部付属病院 神経歯科外来 外来責任者 診療教授 成田 紀之 (047-360-9583)

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