患者さんからの素朴な疑問

唇・顎・口蓋裂の治療は?

Q:顎変形症(がくへんけいしょう)や唇・顎・口蓋裂(口裂)の治療はお願いできますか?
当病院は歯学部の付属病院ですので,顎変形症(がくへんけいしょう)や唇・顎・口蓋裂(口裂)の治療は可能です。一般的な内容について,今村先生に解説していただきます。

顎変形症(がくへんけいしょう)の治療

顎変形症患者の横顔
図1.顎変形症患者の横顔
外科手術を併用した矯正治療が近年増加傾向にあります。外科手術と矯正治療にどのような関係があるのか不思議に思われる方も多いでしょう。もともと矯正治療のみで治療可能な対象となる患者様は上下のアゴの前後的,垂直的な位置関係に大きな不調和がないということが大前提になっています。
しかし,その位置関係が正常範囲から大きく逸脱してしまった患者さんもいらっしゃいます。この様な症状を呈し審美的な問題を抱えている状態を顎変形症(がくへんけいしょう)といいます。
原因と治療
顎変形症には先天的なものと後天的なものがあり,先天的な顎変形症には様々な症候群に由来するものや,唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)と呼ばれる生まれつきのものがあります。後天的なものには交通事故などの外傷や,癌や腫瘍などの疾病により引き起こされたものがあります。

しかし,多くの顎変形症は原因不明のものが多く,顎変形症と診断され,咬合の改善のために外科手術が必要と診断されますと,外科手術はもちろん矯正治療まで全て保険診療となります。

診療は矯正科が中心となったチームアプローチが必要になります。まず矯正科で精密検査を行い,矯正治療単独で治療が可能かどうか検討します。変形の度合いや,歯の欠損状態などから口腔外科や歯科補綴(ほてつ)科などの他科の応援が必要になる場合が多いのです。


治療開始のタイミング
顎変形症で下あごが前に出ている状態
図2.顎変形症で下あごが前に出ている状態。
治療時期は外科手術が必要な場合と必要でない場合で異なります。外科手術が必要な場合,男性で18歳,女性で16歳ごろまで成長が終了するのを待ってから開始します。成長期にあわてて治療をしても再度成長がありアゴの変形が再発する心配があるからです。

治療のタイミングがよいと判断されれば矯正治療が開始されます。矯正のみの治療の方は通常の流れで治療が進みます。外科手術が必要な方は手術に先立ってある程度歯を並べ,手術が安定して行われるように術前矯正を行います。その後,外科手術により上下のアゴの位置が改善した状態で,術後矯正により咬合の仕上げを行います。



唇顎口蓋裂の治療
先天的な顎変形症の中で厚生労働大臣が定める疾患については外科手術の適用の有無を問わず,矯正治療は保険診療となります。
その疾患とは唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ),第一・第二鰓弓(さいきゅう)症候群など11疾患です。

中でも唇顎口蓋裂は日本人では400~500人に1人の割合で発症する極めて発症頻度の高い先天奇形です。

現在では歯科はもちろん産科,形成外科などの医科との連携が密にとられるようになり出生直後から十分管理されるようになりました。



唇顎口蓋裂とは

唇顎口蓋裂の口の中。歯並びが悪くなります
図4.唇顎口蓋裂の口の中。
歯並びが悪くなります。
口唇裂の患者さんの写真。鼻から唇にかけて傷があります
図3.唇顎口蓋裂の顔貌。
鼻から上の唇にかけて傷があります。
上唇(じょうしん)や上顎(じょうがく)の骨が完全に出来上がらないで傷ついたような状態で出生します。したがって症状は主に上あごに出現します。傷の状態で色々なタイプに分類されます。出生直後から授乳などの問題があり,早期に様々な手術を受けなければなりません。

治療の流れ

唇顎口蓋裂の歯並びを横から見たところ
図5.唇顎口蓋裂の歯並びを横から見たところ。
1.生後3カ月~2歳=唇や顎の傷をふさぐ手術を行います。
2.2歳~6歳=言葉の訓練や虫歯の治療および部分的な矯正治療を開始します。
3.7歳~青年=矯正科がメインとなり歯科治療管理を行います。

上あごの成長が極端に悪いと,成長が止まってから上あごと下あごの手術をして咬みあわせを作る場合もあります。

異常症状が上あごに出るため通常の矯正治療より上あごの治療により難しさが出てくるという特殊性があります。

また,その特殊性のため治療期間が通常の治療より長期に及ぶことがあります。もし,手術の適用となれば10年コースとなることもあります。したがって,治療の成否には本人の努力はもちろん家族の大きな支援が必要となります。しかし,治療が成功すれば咀嚼(そしゃく)機能の改善と審美性の向上によって患者本人の生活の質向上に大きな貢献をすることになるでしょう。

後天的な顎変形症(がくへんけいしょう)

後天的な顎変形症(がくへんけいしょう)の多くは原因が特定できません。ホルモンバランスの異常や,悪習癖などが複雑に絡み合って起こると考えられています。

身体の骨の成長と共に,上あごと下あごの骨も形成されるわけですが,この時左右あるいは前後に成長量のずれが起き,顔に変形,歪みが生じるのです。当然,口腔内にもかみ合わせの異常が見られるようになります。

しかし,患者さんご自身で歯並びが悪いことに気づかれる事もありますが,よほど大きなあごのずれがない限り,顔やあごに変形があって,かみ合わせが悪くなっているとは思わないことが多いのです。つまり,隠れた顎変形症も多いのです。

私たちは歯並びが気になって来院していただいた患者さん全てに対して,お口の中の診査だけでなく,顔全体を含めた形態と機能を十分に検査を行います。そして,患者さんの生活の質を向上させるため,歯列矯正治療だけでなく外科手術を積極的に取り入れ,顔全体の美しさを追求した治療を提案しています。

平均寿命が年々伸びる現在,かむことが益々重要であることは周知のことです。しかし,そのためには,整ったあごの土台に並んだ正しい歯列が必要なのです。

歯並びや,顔のバランスが少しでも気になるようであればどうぞお気軽にご相談下さい。


連絡先

日本大学松戸歯学部付属病院 顎顔面矯正科 准教授 今村 隆一 047-360-9540

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